馥郁たる神の酒 大倉本家の酒造り(産経新聞)

 験(しるし)なきものを思はずは一坏(ひとつき)の濁れる酒を飲むべくあるらし(大伴旅人、万葉集)

 《なんの役にも立たない物思いをするより一杯の濁り酒を飲むべきらしいよ》

 およそ酒飲みの常套(じょうとう)句というのは、昔も今も変わらない。風流の歌人、旅人が愛したのはどんな酒だったろう。

 奈良市の正暦寺に「日本清酒発祥之地」の石碑がある。古来朝廷が担った酒造りは、寺院で「僧坊酒」が生産されるようになり、中世には奈良の酒は高品質で名をはせた。寒造りや火入れなど、近代に至る醸造技術はそのころに確立されたそうだ。かつてお神酒として神社に納めていた「濁酒(だくしゅ)」を造り続ける蔵元、大倉本家を訪ねた。

 万葉集にも歌われた二上山のふもと、奈良県香芝市。旧家の重厚な門構えに酒造りのしるし、杉玉が揺れる。毎年11月、酒造りの神で知られる大神(おおみわ)神社で醸造安全祈願祭が行われ、真新しい杉玉が届く。杉は神木であり、お守りでもあった。青々とした玉が軒先に掲げられると「新酒できました」の合図。次第に茶色に変わっていくのも酒の熟成を知る目安となる。

 「普通、酒米を蒸しますが、濁酒はかまどで米を炊いて酒母をつくる水もと仕込み。蔵に住み着いた天然の酵母と乳酸菌に任せる昔ながらの酒造りです」という4代目、大倉隆彦さん。

 手間ひまかけた濁酒は注ぐととろり。馥郁(ふくいく)たる香りに神の恵みが宿る。(文 山上直子、撮影 門井聡)

【関連記事】
日本酒“良・縁”イタリア料理 リゾットに純米大吟醸
“日本酒”の新たな仲間 国産マッコリ
長続きの秘訣は? 老舗の割合1位は山形
清酒造りでの異臭「つわり香」抑える新酵母
携帯ゲームで日本酒PR 菊正宗、記念館への来店促進

<火災>大阪府立大学の部室棟燃える けが人はなし(毎日新聞)
大阪府立大の体育部室棟で火災(産経新聞)
マンション女性変死 強盗殺人で知人の男を逮捕 大阪・河内長野(産経新聞)
J&J元代表を脱税で在宅起訴(産経新聞)
ナショナルセンター独法化で中期目標などを議論(医療介護CBニュース)

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。